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V o l :2002/006
Date:2002/6/4

◇GT選手権/第3戦 菅生◇

 開幕戦を中々の好調で終えたGT選手権、低重心でコーナリングスピードの高い国産レーシングカーたちに対して、サスペンションジオメトリーをスタンダードに戻すことを条件に、1mmのリストリクターサイズアップを許された我々は、そのエンジン出力の5%程を回復し、レース中のファステストラップのおまけつきで、状況下では金星ともいえる2位入賞を果たした。ここで一般には良く分かりにくいハナシ、「なぜ国産勢のマシンは低重心なの…?」というと、これは我々が使用するポルシェが、「世界中のプライベートチームのレース活動を支える」と言った目的で、ほとんど生産車のレイアウトを踏襲したままレースカーとして量販しているのに対して、国産勢はといえば、サスペンションの取り付け部分などを大幅に変更し、生産車とは全くかけ離れたレイアウトで数台だけ製作され、もはや一昔前のフォーミュラーカーのようなサスペンションジオメトリーを持っており、事実10年前のフォーミュラーカーより速いコーナリング速度を記録しつつあることを言う。
 実際に今回の菅生での予選で、NSX勢がマークした1分17秒台というタイムは、現在のフォーミュラーニッポンのレースタイムとほぼ同等のタイムであるが、GT500と言うからには、いまどき500馬力とは言わないまでも、600馬力近いエンジン出力はあるとして、車重は1200kgに及ぶウェイトを持っている。一方でフォーミュラーニッポンはどうかと言うと、V8で3000ccのエンジンを持ち、9000回転でエンジンリミッターが働いてしまうものの、その出力はおよそ500馬力を発生する。驚くべきはその車重で、GTカーの1200kgに対しフォーミュラーニッポンのマシンは600Kg程でしかない。カーボンファイバーで製作されたモノコックシャーシはとても軽量で強固なものであるし、一人の乗員しか許さないそのレイアウトは、地上わずかに数センチのところにその乗員が着座する。F−1とほとんど変わらない立派なウィングを前後に備えて、全開でコーナーを駆け抜けるこのフォーミュラーニッポンのタイムと、車重がおよそ倍もあるGT500のマシンが、ほぼ同タイムで走るとはいかなることだろう。このまま暫くするとGTは、鈴鹿の名物130Rを全開で駆け抜け、ラップタイムも1分40秒台に突入し、ほとんどF−1と変わらないタイムで走ってしまうのではないだろうか、国内自動車メーカーの力、恐るべしである。

 それにしてもGTレース、この「けたたましい」マシンを操るには、ドライバーもそれなりに「けたたましさ」を奮い立たせなくては到底操縦はできない。うっかりしているとドライバーがマシンから振り落とされそうな勢いであることは間違いない。それ以外にもドライバーには、この打席でヒットを打たなければ『選手交代』させられてしまいそうなプレッシャーがあり、選手の競争力を高める…といった部分では必要なメカニズムではあるが、あまりにも進化しすぎたマシンというのは、逆をいえば「強烈なスピード感覚」さえあれば誰にでも操れるものだとも言える。一番いい例がアンチロック・ブレーキ(ABS)である。これは現在のGTレースでは禁止されているデバイスであるが、もし全車がこれを採用したとすると、極端に言えば誰もが同じところからブレーキングできる…といった現象が起きてしまうだろう。そりゃあ僅かにドライバーのテクニックの差も出るだろうし、メーカーごとの僅かな差も出てくるとは思うが、まごつく新人をベテランのテクニックでズバッと追い越す…、なんてシーンは二度とお目に掛かれないのかも知れない。ブレーキに限らず、それに近い状況があらゆる部分で引き起こっている、トラクション、ブレーキング、コーナリング、すべての部分でマシン性能が優り過ぎ、ドライバーは誰が乗ってもテクニックは然る事ながら「けたたましい勢い」だけは失ってはいけない必須科目となっている。いや、むしろ言い換えれば、経験や才能から来る、磨き出された『光り輝くテクニック』と、「けたたましさ」に乗っかっただけの『猛烈な勢い』とのラップタイム差がほとんどなくなってしまっているようにさえ思える。うっかり見逃し三振でもしようもんなら、次の打席はないような「プレッシャー」もあるから、ドライバーはみんな大変である。だって、自分もそうであるように、自分以外の人が乗っても(たとえ若手でも)マシンの性能に乗っかって「けたたましい勢い」を持ってすれば、それなりの速さで走ってしまうのは間違いないのだから…。僕にとってこの図式は、ドライバーをマシンが遥かに超えてしまった、`80年代のウィングカーの時代を思い起こさせるものである。チームもメーカーもタイヤ屋さんもレースをやっている以上、競争だからしょうがないものの、誰もいい事だとは思っていないのだが…。それでなのか…GT500はなぜか尻に火がついているような様子で、もう「ビタ一文」待つこと

 ところで、僕の勉強しているアメリカの「NASCAR」ではどうなのだろう。彼らのマシンはコンピューターの一切を禁止しているし、電子センサー類も一つも付いていない。ドライバーとメカニックは相変わらず長年の経験と勘でマシンの動きを掴みセットアップしていく。もちろんデーター・ロガーもないのでドライバーがセンサーそのものである。マシンは重く、サスペンションの形状も40年は変更されていないクラシックなものだから、ドライビングテクニックにも経験値が物を言う。おまけに年間37戦もあれば、日本のGTレースよりドライバーも「待てる」のである。レースだから人生と一緒で、いいときもあれば、損な役回りの時もある。「いつも自分だけが勝とうとする…、しかも卑劣な手段ででも…」いよいよそんな国の「傲慢な、独りよがり」のレースに辟易としている今日この頃です…、何とかしなければ…。


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