

V o l :2002/002
Date:2002/3/18
◇スーパー耐久/第1戦 美祢◇
毎日がたいへん暖かいですねえ…、桜の花もそろそろ咲き出しているようだし、このまま行くと我が家の新1年生の入学式までに桜はすっかり散ってしまうのではないかと心配しています。やっぱり桜吹雪の校門で記念写真ってのが定番ですよねえ…、そのうちこういったことも写真屋さんとかが「紙吹雪」かなんか散らせて写真撮るようになるのかしら…。季節感というか季節の風物詩と少しずつズレが出てきているように思います。
今年もさまざまな方々のお力添えを頂いて、ようやくシーズンのスタートを切ることができました。いろいろな情報が飛び交う中、実際にサーキットに足を運んでみると、大物ドライバーの欠場や、長年続けて来られたチームやスポンサーの不参加を目にして、改めて取り巻く環境の厳しさを感じた。そんな中で、特にスター性もないこの僕が、今年も参戦シートを獲得できたことは本当にありがたいことである、よりいっそうの精進を心がけなければならないと思っている。
レースウィークは事前の週間予報どおり、非常に温かい小春日和のようなコンディションの中で行われた。中には半そで姿のカメラマンなどもいて、とても3月のレースとは思えないような感じである。10年ちょっと前までの開幕戦というのは、鈴鹿サーキットで行われる2輪と4輪の共催イベント「ビッグ2&4」というレースが開幕戦の常となっていた。フレッシュマンレースを卒業してようやく全日本レースに出場し始めた‘85年ごろのこのレースで、コースが雪に覆われてまったく走れないテストセッションを何度か経験した。3月の初旬がこのレースのカレンダーとなってはいたが、それにしても半袖とはどうしたものだろう…我われも開幕早々から車載ドリンクの搭載をリクエストすることになった。
こうしたことから今年は、久々に昨年のタイムを上回ることのない予選となった。気温の上昇は確実にエンジンの出力低下を招き、路面温度の上昇も、ほど良さを過ぎるとタイヤグリップの低下を招く。特にエンジン出力には確実に反映されるが、これはエンジンが吸い込んだ空気(実際にはガソリンを混ぜた混合気であるが)は温度が高ければ高いほど膨張し、同じ体積を吸い込んでも(一般的に排気量といわれる数値)酸素の含有量が減少し、エンジン原動力である燃焼爆発が弱くなってしまうからである。ならば我われも使っているターボエンジンなら強制的に空気をねじ込んでいる訳だから・・・というのもあるのだが、ターボエンジンはそもそも燃焼温度が高いという悩みを持っていて、吸気温度の上昇がこれに拍車をかけ、エンジンを破損から守るために電子制御で燃焼効率を落とす仕組みになっている、その結果こちらもパワーダウンを余儀なくされる訳である。余談であるが、こういったことは気圧にも十分影響されて、比較的標高の低い鈴鹿とかここ美祢あたりではそうでもないが、富士などは1000m近い標高を持っているためエンジンパワーにはずいぶん影響する。市販車であっても、スピードウェイのすぐ近くにある富士霊園の上り坂などはまったくパワーがない感じがするのはこのためである。
さて我われは、今シーズン情勢が厳しい中にもかかわらず新型「ランサー・エボリューション・7」を投入することになった。チームは昨年と同様、山形のモーターレーシングの草分け『RSオガワ』であるが、オーナー兼ドライバーの小川日出生さん率いるこのチームは、その人柄と同様に「朗らかで堅実な」レース運営を30年間続けてきた。今年も冬の間、自ら工具と溶接機をふるってマシン製作に関わってきた。いつもは事業の自動車販売と車検整備、この時期はスタッドレスタイヤを販売しながら、夜は遅くまでマシン製作という毎日である。僕も夜遅く電話することもしばしばなのであるが、必ず工場にいる人で、クルマ好きでは負けない僕も完全に脱帽である。僕がこのチームで走り続ける限り、この人には相変わらず頑丈で健康でいてもらわなくてはならない、なぜならこの人に代わる仕事をできる存在は「そんじょそこいら」にいないことは間違いないからである。
レースは新車のマシンには「お約束」のマイナートラブルに見舞われて、予選ノータイムの最後尾からスタートすることになった。そもそも、さほど新車テストをする時間もなかったこともあり、今回は完走して確実にポイントを稼いでおくことに主眼を置いていたので、下位のクラスも慎重にパスしながら周回を重ねる。特にシーズンの開幕戦は経験の浅いドライバーもたくさん出場していて、バックミラーもままならない人たちを掻き分けて行くのは中々スリリングなものである。万が一、接触でもされようもんなら、これまでの徹夜の作業も水の泡となるので責任重大である。長いとは言えシリーズは全部で8戦しかなく、ひとつでもノーポイントに終わったら致命的であり、事実昨年はそれで敗れたといっても過言ではない。慎重に前車を追い越し、昨年チャンピオンの「プーマ・ランサー」の後方30秒に着け2番手となる。2位なら十分の位置ではあるが、一応先方に楽をさせないようにプレッシャーを掛け続けるものの、その間隔に大きな変動はない。お互いの姿を確認することはできないまま、タイヤや燃料そしてブレーキなどの消耗の許される限りを使ってチャージするが、先方も同じく限られた消耗の中で目いっぱい逃げているのだろう。どうやら互角の争いができることは明白で、こうなればピットストップと終盤のハンドリングの良否如何では・・・、と思い始めた2度目のピットストップ後、残念なことにこちらのブレーキが根を上げてしまった。ドライバーが極限をその足の裏で探りながらペダルを操作する訳だが、どうやらこちらの方がほんの少しだけ使いすぎたようだ。マイナートラブルに見舞われたテストセッションであまり走れなかったこともあり、ドライバーが少しその極限の感覚を掴みきれていなかったのだろう。そんな中でも再ピットインしてブレーキ・キャリパーを交換したにも関わらず2位を確保できたことはラッキーだった。まだまだシーズンはこれからだし、宿敵「プーマ」とはこの先も1位と2位を交互に繰り返しながら戦っていくことになるだろう。そんな中、最終的に勝敗を分けるのはリタイアのノーポイントの数となるだろうし、今回このピンチを2位で切り抜けられたことは、「条件下で最大の結果を得た」といっていいのではないだろうか。
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