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V o l :2002/015
Date:2002/11/13

◇GT選手権/第7戦 美祢◇

 今シーズン、ポルシェ勢の中では一番の速さを見せていると言っていい、我々「エンドレス・タイサン・ポルシェ」であるが、ここまで、ポルシェというマシンの特性から来る(エンジン・ミッションをリヤに持つ)重量配分の問題から、コーナーの連続するコースレイアウトを不得意としてきた。 最新鋭の技術を駆使した国産メーカーのGTマシンたちに比べ、そのコーナリング速度において、幾分劣ることはこれまでもお伝えして来たとおりだ。その分と言っては何だが、我々ポルシェ勢にはストレートでその遅れが幾分取り戻せるようエンジンの出力において優位を保たせてもらっている。コーナーで少し後れを取りながらも、次のコーナーまでのストレート区間でその遅れを取り戻す訳だが、コースレイアウト的にコーナーが連続するような場所では、その遅れを取り返す間もなくまたコーナーが訪れてしまうため、まったく不利な状況に陥ってしまう訳である。具体的に言うと、このGTシリーズが行われる日本のサーキット7箇所のうち、鈴鹿・菅生・セパンの3箇所は全く不利といっていい状況であるが、富士や茂木などは逆に有利な状況と言っていいのではないだろうか。残りのT&Iと美祢については五分五分な戦力を保っているような状況であると考えられる。このシリーズ全8戦も、いよいよ大詰めの第7戦となり、残るはここ美祢と鈴鹿を残すのみとなった。これまで、今シーズン序盤の不運から少なからずポイントを落とす結果が続いたものの、その後のしぶといレース運びで、シリーズ3番手のポジションを堅持している。鈴鹿と美祢を比べると、我々ポルシェには圧倒的に美祢の方が戦いやすく、鈴鹿ではここのところ2年連続予選10番手以下に沈む有様であり、シリーズタイトル獲得のチャンスは、ここ美祢の成績如何に問われることになった。
 テスト、そして予選と順調にスケジュールは消化され、常にベスト5のポジションをキープし、実際に予選ポジションも5番手を獲得した。我々よりシリーズポイント数の多い「ユニシアジェックス・シルビア」と「アペックスMR-S」が、今シーズン稼いできたハンディウェイトの重みに苦しめられてか、我々の後方に沈んだことも好材料で、ポイントリーダーに並びかけるチャンスを感じさせた。ただ唯一、前戦の「もてぎ」から搭載しているこのエンジンがいまいちシャキッとせず、ドライバーの不満を買っていた。エンジニアも深夜に及ぶ作業で、ありとあらゆる手は尽くすものの大きな改善は見られず、結局は「ドライバーさん頑張ってください…」という状況となった。僕は本来、エンジンのことに注文をつけるのはあまり好きな方ではく、「エンジンに頼るのは腕のない奴がすることだ…!」と見栄を張っては若い頃から損をしてきた。だけど今回ばかりは、このシリーズ戦の大事な局面で、このエンジンではいささか疑問を抱かざるを得ないような状況であった。
 レースは、ここのところすっかりポルシェのドライビングをモノにした木下君の好スタートで始まった。オープニングラップの混乱を巧みにすり抜け3番手を走行する。心配された雨も降り出す様子もなく、トップ2車をしっかり追走し後半に期待を抱かせた。と言うのも、GTのレースはドライバーが2人で交代して走るわけだが、どのチームも2人とも速いドライバーを抱えている訳ではない。スポンサーの関連や、さまざまな状況で経験の少ないドライバーを使っているケースも少なくなく、事実、現在われわれの前を走る2台のクルマのセカンド・ドライバーは経験の浅いドライバー達である。対するこちらはジャニーズ系と言うよりは吉本系と言わざるを得ないものの、経験では他に引けを取らない福山選手を残している訳だし「比して一分の利がある。」と言っても誰も文句は言わないだろう。相変わらずシリーズ・リーダー達は後方で苦労している状況だし、ここは一つ最大限の頑張りをして、幸運も味方すれば「優勝の目がない訳じゃない。」と思い、交代に備え気を引き締めていた。ところがその矢先、心配のタネだったエンジンが突然壊れてしまうことになった。 もともとパワー不足を感じてドライバーが2人とも口を揃えていただけに「もっと強くアピールして、スペアエンジンに交換しておけば良かった…」と思ったが、それも後の祭りだった。残るは、ポルシェにとって最も不得意とする「鈴鹿」の最終戦、我々のタイトル獲得の可能性は大きく遠のくことになった、あとは幸運を祈るばかりである。

◇NASCAR WINSTON CUP/第34戦 ロッキンガム◇

 今シーズン、幸運の連続で手にした「ナスカー・ウィンストン・カップ・シリーズ」参戦であるが、今回いよいよ今シーズン予定された「3戦出場」の第3戦目を迎えることになった。これまで、レースを始めての25年、様々な不運に見舞われたこともあったが、それ以上に様々な幸運や奇跡にも遭遇してきた。今日現在もこうしてレースを続けられているということは、その「不運」に比べて「幸運や奇跡」と言うものの方が幾分多く迎えられたからかもしれないが、元来、「のん気」と言うか「お人好し」というか、悪いことを殆ど忘れてしまう性質の僕は、今回のナスカー参戦のチャンスを頂いた事を始め、自分のドライバー人生を振り返り「なんて運のいいドライバーなんだろう…」とつくずく感じていて、実際に手を貸して下さった方々はもちろん、いつも僕を守ってくれている「神々」にも感謝している毎日なのである。
 そんな事で手にしたナスカー参戦、これまでの2戦を幸運にも予選通過を果たし、おぼつかない足取りながら決勝レースを走り、いまだ完走はないもののこのレースに必要なものを一つ一つ手にしている状況である。緒戦にいたってはクルマのこともレーストラックやレース運営のことも良く分からないまま「がむしゃら」で望んでいた。ドライビングについても、その特殊性に自分が適応しているかどうかも分からないままであった。2戦目のレースはクルマにもようやく慣れ、速く走らせるのに何が必要なのかが解かりかけたレースであったが、経験不足からマシンをなかなかセットアップできず、そしてこのレースを走りきるための体力の膨大さを知ったレースであった。そして今回のロッキンガムは、コース的には緒戦のドーバーと似ていることから、この2戦の経験を活かすことにより、さらに好成績を期待して臨んだレースであった。
 ところが金曜日のプラクティスが始まってから、コースイン数周後に記録した24秒71からなかなかタイムアップすることができず、ピットインしてセットアップを繰り返すも、どれとしてハンドリングの改善に貢献するものが得られない状況が続いた。前々回のドーバーのレース後、ここでテストをしているが、その時に記録した24秒4にすら遠く及ばない結果に気を揉みながらもセットアップを繰り返すが、マシンのハンドリングは一向に改善されないまま、無念にも2時間のプラクティスはタイムアップとなった。
 もうこれで2時間後の2周アタックの予選を迎えるわけだが、マシンのハンドリングは最悪のままだし、これまでは初めてという事もあり、自然と自分のドライビングも疑ってはきていたが、今回は別、このクルマでは到底のごとく予選は通りそうにない、それは例え誰が乗ってもムリであろうことは容易に想像できるほどであった。 またもやインターバルの2時間を利用して「あてずっぽ」のセッティングをリクエストし(今だ、どこをどうすれば速くなるのかが、まだ解からないのである…)、一か八かの予選アタックでこの日のベストをコンマ3秒上回る24秒44を記録したが、あえなく最後尾で予選不通過となってしまった。莫大な予算を費やしてくれているチームには誠に申し訳ない結果であったが、改めてこのレースの奥の深さを知ることになったと共に、それゆえに経験豊富なエンジニアやクルーチーフの必要性も実感することになった。とても悔しいけれど、この経験も来年への筋肉にするしかない。


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